ロンドンは味つけしない
ダ・ポンテも折り返し地点を過ぎて、ゴールが見えてきたところ。役者さんは日々芝居をアップデートしていて、オケも緻密に間をはかりながら音楽をつくる。なかなか神経がすり減る作業だけど*1、飽きない世界。
劇中に「鶏とセロリのスープ」が登場する。これがいいシーンで、しかも毎回少しずつ雰囲気を変えてくるので、毎日見てたら誰でもずきゅーん、と涙腺のストッパーを撃ち抜かれるやつ。
この名シーンを深く理解し、よりふさわしいアクセントとダイナミクスで楽曲を演奏するためには、その背景を知ることから始めなくてはならない。したがって、鶏とセロリのスープをつくるところから本当の作品づくりがスタートすると言えよう。
昼夜2公演だったので21時過ぎに山手線に乗り、まだ空いているスーパーへ駆け込んでセロリと鶏肉を買う。時間も時間なので半額シールがついている。スーパーの値引き班も、豊かな理解を目指すわたしの背中を押してくれているようだ。
「これ何で味つけするんですかね」「ナンシーはどこの人だっけ」「ロンドンですね」「イギリスか…じゃ味つけとか特にないね」といった鋭い考察に基づき、素材の味だけのレシピを用いることとした。この時点である程度勝敗は見えているものの、せめて鶏ダシだけでも…と手羽に泣きついた次第。
手羽、セロリ、余ってたので緊急参戦の玉ねぎをコトコト煮込む。
この隙間時間を有効に使いたいタイプなので筋トレしてたらつい熱中してしまい鶏肉のダシが出きってスカスカになってた。
まぁ鶏は実質ダシ要員だし、良しとしよう。肉と香草を煮込んでおいしくならないはずがない。たくさん作ったけどスープなので実費ゼロカロリー。もりもり食べる。
結果
セロリの苦味がかえって際立つ一品。鶏ダシが悪い方向に絶妙な仕事をしており、せめて塩は欲しかった。
困り果てて醤油を垂らしたら、ふつうに水炊きっぽくなって食べ進めやすくなった。醤油はえらい。
したがって該当シーンは「ねぇ…あたたかいスープ飲まない?ジャパニーズ水炊き」と差し替えても成立する*2。
*1 たいへんなのは詩奈ちゃん。バンマスえらい。
*2 この論理でいえば、冒頭に出てくるイタリアのお菓子、ラム酒が香る「パネトーネ」も、麹が香る「酒まんじゅう」ぐらいの感じになると想定。