「明日は札幌行くんすよ、特急と鈍行どっちにしようかなぁと思って」
「いやーーーーー札幌行くなら特急一択ですよお客さん」
「そうですか」
「わたしなんかも札幌は買い物しに行きますけど、まず特急ですね」
「なるほど」
「とにかく特急がおすすめですね!」
「そっかー、じゃそうしてみます」
なぜそこまで特急を推すのか。その理由を知るべく、わたしは旭川~札幌各駅停車の旅を決意した。
旭川から札幌まで、JRで2,860円。しかし券売機で切符を買おうにも、2,320円までしか買えない。運賃表を見ると、札幌の欄は5,220円(たしか)。特急料金が乗った金額しか書いていない。売ってもいない。
隠されれば暴きたくなるのが人情というもの。ひとまず後で精算すればよかろう、ということで2,320円の切符を現金で買い*1、モダンなデザインの駅舎の階段をのぼってホームへ。
幸い空いていたので、ベースを立てかけてゆったり座り、発車を待つ。やがて発車時刻になり、ドアが閉まって汽車*2は走り出す。
何かがおかしい。
この日、道内各地では観測史上最高の気温をマークする。汽車はその熱エネルギーに満ちた空気をゆるゆるとかき分けて走っていくわけだが、車内が暑い。知っている電車の中は冷房がきいているはずなのだが…
そう、この路線には空調がない。
推理も探索も必要なく、特急を勧める理由は瞬間的に理解した。理解したと同時に異常な暑さに全てを後悔した。なるほど次から特急にします*3。
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この日はD-Bopでセッションライブ。はじめての奥野さんのブロウ、山下さんのリリカルな演奏、素晴らしかったなー。三露くんはジャズのツボの見方を共有できたのでとてもやりやすい。この人たちを腕力に頼らずまとめるところが名雪さんのすごいとこ。
D-Bop行く前に、三露くんがかの高名な回るお寿司「根室寿司」に連れていってくれた。初手のタコから最高。トリトンもいいけど、根室は段違い。
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25日はこっそり別名義でやってるほうのライブ。先端技術を使ったイベントで、テクニカルな面で厳しいところはあったけど、まず個人レベルでこの挑戦をしたことに意味がある。このデジタル技術を活かした形式のライブも、じきに当たり前のものになるんだろうなぁ。
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というわけで、北海道4日間の旅はミュージシャンの知り合い、友達がたくさん増えて、連日楽しく演奏できて、言うことないものでした。これで気温さえ何とかなってくれてたらなぁ……*4
*1 近距離の切符はカードでは買えない。この日まで知らなかった。
*2 北海道だからね。
*3 とは言ってみたけど、実際にはコントラバス担いで昼過ぎに札幌についてもホテルのチェックインはまだ、食事をとるには楽器がジャマ、ということで移動が早くても困ってしまうのである。
*4 旅の途中で洗濯もしたけど、それでも着替えの数が足りないくらい汗びっしょり…