日吉直行×小美濃悠太≪線上ライブ≫ “ongen!”

予想できなかった(いや、してたかも)凄い日になりました。

僕は、もともと日吉くんの音楽のファン。音楽はもちろん、即興演奏への哲学、音楽家としてのあり方全体についても共感するところが多くて、その動向を追いかけていたのでした。彼が東京に来ればカフェインかアルコールを摂取しながらああだこうだと話し込み、用事があって電話してもああだこうだと深夜まで長電話したり。

これだけ話をしていてるのに、一緒に音を出す機会は今までなかった。これで、いざやってみたら全くサウンドしなかった、なんてことになったらどうしよう。ずっと文通をしていたせいで、妄想の中の相手の像が膨らみすぎて会うのが怖いのと同じような感覚。文通したことないけど、たぶんそんな感じの気持ちでいました。

で、結果的には、何の心配もいらない想像以上のアンサンブルに。

「ジャズじゃない」ことについて

日吉くんと比べると、僕はだいぶ「ジャズ」に寄っている(依っている?)音楽家であることは否定できない。日吉くんは「ジャズ」という言葉を完全に切り離せないと思うけど、作曲家であり、即興演奏家。

ピアノとベースのデュオという編成は、ジャズっぽい演奏の引力があまりにも強い。相対的にベースのジャズっぽさが強くて、支配してしまいがち。でも日吉くんと僕が一緒に(カッコつきの)ジャズっぽい演奏をしたとしたら…楽しいだろうけど、一緒に演奏する理由を見つけるのが難しいかも。

そういう理由で、僕は「ジャズ」の看板を下ろして、コントラバス奏者(即興演奏家)としてこの日に臨みたかった。とはいえそれを意識しすぎるのも鬱陶しいし、できるだけニュートラルな気持ちでいたいなぁ…と思いながら、新幹線に乗り遅れたり金券ショップを恨んだりしながら(前の記事を参照)、神戸100BANホールに入ったのでした。


しかしこの100BANホールというのは最っっっ高に演奏しやすいところ。旧居留地にある古いビルの2階、天井の高いフロアにあるホールは、日吉くんたちのチームの根城。いやーここでいろんな実験をしてたら、ほかで同じことをするよりもいろんな要素が聴こえてくるのも納得。ベースもよく鳴ってくれてました。広いハコですが、マイク要らず。

セットリストはこんな感じ。

1. Blinking (Naoyuki Hiyoshi)
2. After All “み” (Yuta Omino)
3. Maboroshi (Naoyuki Hiyoshi)
4. Palhaço (Egberto Gismonti)
5. 実在しない民謡 (Yuta Omino)
6. tobali to hibari (Naoyuki Hiyoshi)
7. A PLACE WHERE HE LIVES (Naoyuki Hiyoshi)
8. Rosemary’s Baby (komeda)
9. 月亮代表我的心 (孫儀 / 湯尼)
10. 蒼い夜、歩く人 (Naoyuki Hiyoshi)
11. BENGAWAN SOLO (Gesang Martohartono)

https://naoyukihiyoshi.hatenablog.com/entry/2020/08/12/195848

セットリストを見て、あ、おもしろそう、と思った方だけ読み進めていただけたらよろしいかと思うのですが、オリジナル、ブラジル、ポーランド、台湾、インドネシア、という感じです。これを「ジャズ」として吸い取ってしまうこともできなくはなさそうですが、結果からいえば全くそうならなかったわけです。

本番の話

奇跡のユニゾンから、遠く離れても同じ空気を吸っているような瞬間まで(カップルか)、距離が伸び縮みしながら同じものを共有しつつ、即興演奏を進めていけたコンサートでした。

曲の形をしているもの、形を残しているもの、骨組みすらなくて神経だけ残っているもの、いろいろやりました。どうなってもどこへでも行けるのは、「ベースの上にピアノ」という構図にならなかったから、だろうか。たぶん。二つの線が交わったり離れたりしながら走る感覚でした。

しかし日吉くんの繊細さとスピード感には、一緒にやってみて改めて驚かされました…しゅごい…。あと、明確に音楽が鳴ってる。はい。ファンです。

収音・撮影・調律とアーカイブ

このコンサートは、日吉くんと一緒にチームで動いている、録音・五島大先生、撮影とスイッチングは吉成さんと栗山くん、お会いできなかったけど調律師の鈴木さんの作品でもあります。ライブ配信や映像作品としてこれを残せたことが嬉しい!五島さんに自分の音を録ってもらうのは本当に楽しみだったし、ありえないくらい突っ込んで手持ちカメラで撮影した映像も普通じゃ見られない光景が映っていておもしろい。

もう一度見返したい、見逃したけど見たい、という声をたくさんいただいたので、改めて編集して品質を上げたものをアーカイブとして販売できそうです。

で、2曲だけ無料公開することにしました。ヘッドホン・イヤホンで聴いてください。もう一度言いますよ、ヘッドホン・イヤホンで聴いてください。じゃないと真価が伝わりません。

A PLACE WHERE HE LIVES (Naoyuki Hiyoshi)

After All “み” (Yuta Omino)

2020年8月10日 @ 100BANホール (兵庫・神戸)
piano|日吉直行
contrabass|小美濃悠太
録音|五島昭彦 (Time Machine Record)
動画|吉成聡志
調律|鈴木優子
動画スイッチャー|栗山覚
©瞑奏録音


次は東京かな?神戸かな?海外かな?

コメントする