20230916

おなかが空いたら演奏はできないし、演奏はおなかが空いたままするものでもない。このままではぼくは演奏する資格すら持ち得ない。

思っていたよりもやや狭かったホテルの部屋にずるずると入り、なぜか2枚渡されたカードキーを見て「失くすのを見越されているな」とやや自嘲気味に呟いた刹那に訪れる空腹。焦りと使命感で目がちかちかと光りだし、どこを目指すでもなく、うんざりするほど蒸し暑く小さい路地を歩き始めた。

お昼だ。何を置いても、まずはお昼ごはんだ。

15時。ランチタイムには遅く、Google mapで飲食店を検索しても「現在営業中」のフィルタをかけると、『飲食店』という概念がこの世になかったかのようにマップからピンが消え去る。「…コンビニ?大阪まで来て?」ますます焦る僕を嘲笑うかのように、カラカラと風に踊る「支度中」の木札。

阪神タイガースのアレが道頓堀を揺らしてから20時間と経っていないミナミの全ての存在が敵に見えはじめ、南無三、わずかの間とは言え巨人軍のファンであったことが呪いとなったか、と絶望するころに辿り着いたのは心斎橋駅の地下街。そうであった。大阪は地下街が充実してたのであった。

小走りに階段を降り、かすかに感じるスパイスの香りをたどって歩いた先のオアシスがインデアンカレーであった。「インデアンカレーを」椅子に腰掛けるや否やオーダーを告げ、出された水を一息に飲み干す。

やがて運ばれてきたカレーをスプーンですくったあたりで気づく。お昼は新幹線の中で既に食べていたことに。


1stお昼ごはん

2ndお昼ごはん

このあと晩ごはんを抜くだけの自制心が持てるかどうかが見ものです。

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